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市場のパイが大きい東名阪地域には、デジタルホン各社(JR系)とT各社(N産系)がそれぞれ設立され、それ以外の地域は共同会社が設立されたのである。
パイの小さい地域において競争を行って共倒れになるよりも、最終的に消費者の利益になるという判断であった。 その後、TグループはK、デジタルホングループはVとなり、Nとともに、我が国の携帯電話市場をしっかりと支えている。

さて、1995年夏には、PHS(パーソナルハンデイフオンシステム)サービスが開始された。 元々、家庭のコードレス電話を外に持ち出すというNの「ポケットテレホン構想」が基本コンセプトであり、これを発展させるかたちでPHS構想が固められ、各地域に3社が参入することになった。
この時点で、東名阪には携帯電話事業者4社、それ以外の地域には3社が存在したため、PHSを合わせると、地域で最大7社の移動体通信事業者が競争するという状況になった。 実はこのとき、基地局の共用やローミング(相互乗り入れ)を行おうという議論もあったが実現されず、NパーソナルはISNN公衆電話の上に、NNIポケットはビルの屋上に、そしてアステル各社は電柱の上に、それぞれの基地局を設置することになった。
その結果、サービス開始時点におけるサービスエリアの不十分さによるマイナスのイメージを払拭できず、契約者数が伸び悩み、3社のうちNNIポケット(現W)だけが生き残るということになった。 この1.5GHz帯およびPHS事業への新規参入のケースは、過度な競争は必ずしも市場活性化につながらない上に、消費者利益をもたらすとは限らないということを端的に示している。
先般、TがKに吸収されたことにより、一時期の7社から、Wを含めて4社にまで事業者の淘汰が進んだが、今回の3社の新規参入によって、再び7社が競争する体制になる。 今回の新規参入は、果たして市場を活性化させ、消費者に利益をもたらすであろうか。
その点に関しては、すでにサービス開始前から、市場への影響がさまざまなかたちで生じている。 ソフトバンクは、ANS事業のユーザー基盤に対し、携帯電話とのシームレスなサービスを提供するFMC(固定通信と移動通信の融合サービス)を志向している。
過去、我が国の通信市場においてFMCブームは何度かあったが、ブームで終わっていた。 しかし今回は、ソフトバンク参入の危機感から、Nグループ、KグループをFMCへ向かわせた。
固定と移動の融合によって、新たな付加価値が生まれることを期待したい。 イーアクセスは、自社でユーザーを開拓するだけでなく、自社のネットワーク上に多様なプレイヤーを乗せることでユーザーを開拓してもらう、MVNO(仮想的携帯電話事業者)というビジネスモデルの採用を表明し、すでにISPやケーブルテレビ事業者などとの交渉が進んでいるようである。
このMVNOも、過去、ブームと呼べる時期があったが、大きな動きには至らなかった。 BtoC企業が、自社顧客とのコミュニケーションツール、ないしCRM(顧客との関係強化)シールとして携帯電話サービスを提供するBtoBtoC的ビジネスモデルは、我が国の成熟する携帯電話市場に新たな旋風を巻き起こす可能性がある。

アイピーモバイルも、TN一CNMA方式によりデータ通信を中心とした無線ブロードバンドサービスを提供するという、我が国初の事業モデルを採用した。 その可能性は未知数ではあるが、携帯電話市場を大いに刺激してくれることは間違いない。
今回の新規参入は、ともすれば「通信料金の価格破壊」だけがとりざたされがちであるが、新しい技術やビジネスモデルの採用による、新しいサービスの創出競争によって、携帯電話の魅力や付加価値を上昇させる可能性を秘めている。 それによって、我が国の携帯電話産業が一段と活性化され、ひいては消費者に真の利益がもたらされることを期待したい。
第2次MVNOブームの到来。 MVNOとは、「顧客に対して移動体通信の契約およびサービスを提供するが、周波数の割り当てと通信インフラ設備を持たない事業者」を意味する。
1990年代後半から、欧州、特に英国や北欧を中心として登場し、拡大してきた事業モデルである。 また、MVNOの拡大を後押ししている事業モデルにMVNEというものがある。
MVNEは、MVNOのニーズに応じて、インフラ設備などを保持する他の携帯通信事業者との交渉から、フイールド実験に至るまで、実際のビジネスを立ち上げる際の事業計画(料金プランの策定、課金システムの構築運用、アプリケーションプラットフォームやモバイルコンテンツの提供、端末の調達配送、およびカスタマーサービスなど)を提供する。 MVNOは、このMVNEを活用することで、マーケティングや販売促進など、本来の目的に沿った事業に集中できる。
MVNOとMVNEの多様な事業領域パターンを図表1.T2−に示すbMVNEは海外に数多く存在し、MVNO市場拡大の一翼を担っている。 こうした背景もあり、欧州を中心としてMVNO市場が拡大し、中でも英国のヴァージンモバイルのように、加入者を数百万人規模で獲得し、成功を収めている事業者もある。
MVNOは、日本においても2001年頃にブームが訪れ、日本通信やセコムが事業展開している。 しかしながら、参入の事業環境が整備されず、収益が見込めるビジネスモデルを構築できなかったことから、2002年末には、そのブームは去ったかに見えた。
その後、MVNOのうねりは日本を通り越し、米国に渡った。 米国では2004年4月に、セブンーイレブンがMVNOとして携帯電話市場に新規参入している。
それを皮切りに、MVNO市場が急拡大し、2005年10月現在、約80社のMVNOが米国で誕生している。 米国は先進国の中では携帯電話の普及率が低く、まだ6割を超えたところである。

各MVNO事業者は、まだ携帯電話を利用していない低所得者層に向けたプリペイド型のサービスの展開を図り、事業の拡大を模索している。 しかし、ここに来て、日本で再びMVNOが注目を集めている。
第2次MVNOブームの到来である。 図表1.T2−2に、最近の日本企業のMVNO動向をまとめている。
市場から1度は退場したMVNOというビジネスモデルが、なぜいままた注目を集めているのであろうか。 要因は2つ考えられる。
「新規ライセンスの付与」と「第3世代携帯電話の需要拡大」である。 ソフトバンク、イーアクセス、アイピーモバイルの3社が総務省より携帯電話事業のライセンスを付与され、2006年の秋から2007年春にかけて新規参入を計画している。
参入が実現すれば、実に12年ぶりのこととなる。 携帯電話ビジネスは、数百万人規模の顧客接点を獲得でき、かつ毎月の安定した収益が見込める魅力ある事業である。
しかし、これまでは限られた事業者のみが提供できるサービスであるとの認識が強かった。 それがこうした新規参入と、イーアクセスによるMVNO展開の発表や、Vフォンによる法人向け卸売が始まったことで、にわかにMVNOが注目を集め出したのである。
もちろん、英国のヴァージンモバイルや、米国の七ブンーイレブンの動きに触発されたことも否定できない。

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